1年前ほど前からPodcast「コテンラジオ」を聴き始め、それまでは全く興味のなかった歴史にハマっている今日この頃。まだまだ知識は浅いのですが、気になった時代の本を読んだり、背景を詳しく知っていく過程はとても面白いです。
今回読んだ小説「朝星夜星」は、幕末の長崎で日本初の洋食屋を始めた実在の夫婦のお話です。
私は幕末について本当に知識が乏しくて、背景を詳しく知るためにNHKの取材班がまとめた「新・幕末史~グローバル・ヒストリーで読み解く列強vs.日本~」という本を併せて読みました。この本がとても面白くて、幕末の日本が国際的にいかに重要視されていたか分かりやすく解説されていて、歴史知識に乏しい私でもスイスイ読み進めることができました。
こちらの本もとてもおすすめです。
「朝星夜星」は、長崎で日本初の洋食屋「自由亭」を始め、後に大阪でレストランとホテルを開いた「草野丈吉」と妻「ゆき」の物語で、小説はゆきの視点で描かれています。庶民であるゆきの視点で語られる幕末以降急速に近代化していく明治の情景は、教科書では学びえない臨場感があり、先に読んだ「新・幕末史~グローバル・ヒストリーで読み解く列強vs.日本~」での出来事が庶民目線で体感できたので、とても面白かったです。
自由亭は長崎時代から幕末の偉人たちと縁が深く、坂本龍馬の亀山社中、政治家で外交に従事した陸奥宗光、政治家・実業家として活躍した後藤象二郎、三菱商会を創立した岩崎弥太郎など、時代を大きく動かした人物も多数登場します。そもそも丈吉に洋食屋を開くよう背中を押したのは、あの五代友厚だったり、名だたる偉人たちとの交流も見どころです。後に夫婦が大阪で始めた「自由亭ホテル」は、日本に滞在する外国人の宿所となり、新政府と諸外国との外交の場として、重要な役割を果たしました。
歴史的な出来事と同時に、丈吉とゆきの夫婦・家族の在り方も描かれており、こちらもとても興味深かったです。
料理人・経営者としての志はとても素晴らしい丈吉ですが、妾を3人も囲っていたり、今の価値観で考えると、とんでもない夫なのですが、ゆきは妾3人とも上手く付き合いますし、妾たちも立場をわきまえて振舞います。それは今の私の価値観では考えられないことで、最初読んだ時は「丈吉はなんて奴だ」と思いました。ずっと自由亭ホテルを支えてきたにも関わらず、事業が大きくなると丈吉は、ゆきにホテルから手を引き家庭を守るように言ったり、長女・錦には嫌がる縁談を強いたり、正直途中まで丈吉の振る舞いに少し腹が立ちました。もちろんゆきも妾がいると発覚した時には憤慨しているのですが、丈吉を問い詰めたり、妾と別れるように言ったりはしないのです。今と夫婦の在り方や価値観が違うので、それが良いか悪いか考えても仕方ないのですが、一つ思ったのが、ゆきにとって夫から愛されているかどうかはあまり問題ではないように感じました。彼女にとって大事なのは家族であって、そのために自由亭を大きくしようと奮闘する夫を支えるという構図なのかなと。結婚のゴールは夫に愛されることではなく、家族を守ること=自由亭を守ることなのかなと思いました。もともと恋愛結婚ではない二人なので、結婚した当初からゆきは、丈吉の家族の一員として生活しているし、義父・義母とも本当の親のように接し、義妹のよしとは本当の姉妹のような関係になります。結婚が個人同士のものになった現代とは結婚に対する考え方がだいぶ違うなと思いました。
でも丈吉がゆきを嫁にもらおうと思った理由が「ご飯を美味しそうに食べているゆきの姿を見たから」というのが、料理人・丈吉らしくとても良いなと思いました。物語の終盤では丈吉がゆきに対し、とても愛情を持っていたことが分かるエピソードもあり、夫婦には夫婦にしか分からない色んな感情があるのだと思いました。
物語の途中では、丈吉に少し腹が立ちましたが、物語終盤に丈吉が亡くなると、とても悲しい気持ちになりました。今の価値観から見ると自分勝手に感じる部分はあったけど、自由亭に注ぐ情熱は己の利益のためではなく、他の幕末偉人たちと同じで日本の発展に掛ける思いを強く持っていました。その立ち振る舞いはとても立派で、本気で日本のために奮闘した人生だったと思います。丈吉を見ていると、人をある一面だけで判断してはいけないなと思いました。実際物語を読み終える頃には丈吉のことが好きになっていました。妾のエピソードだけ聞くと、ろくでなしだと思ってしまいますが、それだけが彼の全てではないし、そもそも清廉潔白な人なんて世の中に存在しません。現代は特に著名人に清廉潔白を求めすぎていて、とても窮屈な時代だなと思いました。一度の過ちでいちいち断罪していたら、良い面も摘み取られてしまう可能性もあります。もっと広い心を持った世の中になってほしいものです。
五代友厚が亡くなってから、丈吉を始めとするゆきの身近な人が次々と若くして亡くなっていく物語終盤は、読んでいてとても辛かったです。でも彼らが人生を掛け奮闘したことによって、日本は近代化できました。五代友厚は自分の財閥を作らず、大阪の発展に奮闘し最期には借金を抱えるほどだったといいます。今の時代、自分のために財を成すのではなく、国民が幸福になるために奮闘できる人がどれくらいいるだろう。先人たちの努力を改めて知り、国民とまではいかないけど、せめて自分の周りにいる人たちを幸せにする努力はしていきたいと思いました。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。



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